泉鏡花「外科室」

4.24.2016

作家を旅する

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【慎ましく秘められた恋が、永遠の愛へ凍結する瞬間】

「外科室」は、1895年(明治28年)雑誌『文芸倶楽部』に掲載された短篇小説です。

岩波文庫 泉鏡花「外科室・海城発電」


泉鏡花22歳の時の作品で、鏡花文学の原型 をもっともよく示す初期の代表作として知られています。この作品が嶋村抱月(演出家・戯曲家であり、新劇運動の先駆者の一人)らに “観念小説” と称され、鏡花は新進作家の仲間入りを果たしました。



(あらすじ)
つつじ咲きほこる小石川の植物園で、男女は出合った。
医学生とうら若き淑女の間に起こる一瞬の出来事、それはすれ違いざまの一瞥。
ただそれだけのこと。

そして、一度交わした二人の視線が再び出合ったのは九年後。
手術を担当する外科医師と患者の貴婦人としてだった―

慄然とする神聖さをたたえた外科室。
その中央で、貴船伯爵夫人はひたすらに麻酔剤を拒み続けていた。
心のうちの秘密を麻酔剤の作用で口走るのではないかと、それを恐れているのだ。
「そのまま切れ」と言い放つ伯爵夫人。
震撼とする一同をよそに、外科医・高峰はそれを受け入れメスを手に取る。
そして……。


 この陰影深い作品の美世界は現代においても多くの人々に影響を与え、1992年には、歌舞伎俳優・坂東玉三郎さんが監督、吉永小百合さん主演という華々しい布陣でで映画化され、話題になりました。

泉鏡花「外科室」

 一度として交わされることのなかった愛に殉じた男女の、一瞬と一生。泉鏡花独特のロマンティシズムで織り上げられた、透き通る程に純粋な愛の形が鮮烈な作品です。

 朗読者 in KAWAGUCHI vol.11では「外科室」を、真言宗智山派のお寺・瑠璃山薬林寺の 『鏡縁』 を舞台に上演します。『鏡縁』とはいわば “結界” のこと。我々のすぐそばにある非日常空間です。

―その清冽な空間で
―鏡花の魅せる“あちら側”の世界を
―フルートの音色と共に

唯一無二の体感をおとどけします。

【泉鏡花「外科室」ご予約はこちらから】
http://www.art-kouba.com/roudokusha/yoyaku.html