ロウドクシャの本棚

看板『空っぽの本棚に残された書物の面影、採集します』




 No.13「猿の手」W.W.ジェイコブズ

対価の法則を端的に表現した英国怪奇譚
人間の幸福と不幸は、本当にその生涯に同等なのだろうか。 不幸はどん底まで連鎖するし、幸福は降り積もるように注がれる。不公平は人知を超えた領域で確かに存在していると、私は感じる。(北川原梓)

人生一寸先は闇だということを、日常の心地よいぬるさが忘れさせる。だから人はいとも簡単に笑う。あまりにも真剣な他人の苦慮や忠告を。そうやって軽く笑える事が、自身の視野の広さや器の大きさ、聡明さや賢明さを保証してくれると勘違いする。(北川原梓)
怪奇小説精華―世界幻想文学大全 (ちくま文庫)


 No.12「たまご猫」皆川博子

妖しく美しい10篇の恐怖
 (表題作「たまご猫」) 焦り、は人が自分の立ち位置立場を確保したい為の惨めな生理なのだと思う。けれど、人間の大半は後悔とみっともなさと惨めさでできていて、それらをどうやって受け入れていくかが、生きるってことの一つの課題なのだと、ああ、生きるって美しくも試練だと感じる。(北川原梓)
たまご猫 (ハヤカワ文庫JA)


 No.11「血と薔薇 コレクション2」澁澤龍彦責任編集

「およそエロティシズムを抜きにした文化は、蒼ざめた貧血症の似而非文化でしかない」
 読者の全てのコンプレックスを解消し、また新たに贈与し、昇華させてくれる魅力的な妙文のコレクション。かつて文学の中で出逢ったエロティシズムを再考することができます。挿絵や写真など美術にも惹かれてしまい、うっとり、どきどき、、(茶谷ムジ)
血と薔薇―コレクション〈2〉 (河出文庫)


 No.10「天守物語」泉鏡花

泉鏡花の戯曲の中でも屈指の名作「天守物語」
異界と人間世界が交錯する美しく鮮烈な恋の物語 
一何百年何千年と生きてきた富姫は、もちろんそれまでにも燃えるような恋を 何度もしてきただろう。けれどその過去も経験も常に無に帰す事の出来るま っすぐさ、誠実さ、純真さ。自分と相手を隔てる時間の壁に臆することもな い。美しいとはこういう姿の事だと思う。 (北川原梓)
夜叉ヶ池・天守物語 (岩波文庫)


 No.9「冥途」内田百閒

夢であるのかあの世この世の境であるのか、死者との切ない邂逅
 これを読むたびに、人間は、私は、自分と自分以外の誰かで成り立っている のだなと思う。そう思っていつも悲しくなる。無くなったら自分では埋めら れない部分をどうしてよいのかわからずに、悲しくなる。(北川原梓)

一線とは、時に絶望的な隔たりをもたらす。それは拒絶に近しい相互不可侵 の表明だ。すぐそばにありながら、体温や感情を伴う一切が遮断される。生 暖かいこの体には堪え難い寒さだ。けれどもし死者が一線を引くことがある としたら、それは生者への優しさなのかもしれないと思う。(北川原梓)
冥途―内田百けん集成〈3〉 ちくま文庫


 No.8「クリスマスの文化史」若林ひとみ

サンタクロースとは誰? ツリーの発祥は? 本場ドイツを中心にクリスマスの歴史を紐解く
「クリスマスの文化史」ドイツのプロテスタント地域ではプレゼントを配るのはサンタクロースや聖ニコラウスではなく、「クリスマスおじさん」だそう。各国の生活にすっかり馴染んだ文化のルーツを探ると、新しい発見がたのしい。(茶谷ムジ)
クリスマスの文化史


 No.8「遠臣たちの翼 」赤江瀑

鬼夜叉、元清、世阿弥―花を置く人。芸道の源泉に嫣然と横たわる魔物に、惑い誘われる
頁をめくるたびに、今熊野で花開いた猿楽の魔童・世阿弥の妖しく美しい見えざる手に、いとも簡単に捕まえられてしまう。境界線上で犯されている恍惚とした感覚が、背後から消えてゆきません。(北川原梓)

 No.7「蓼喰う虫 」谷崎 潤一郎

「細君譲与事件」―著者のスキャンダラスな私生活を反映した問題作
佐藤春夫に妻を譲った谷崎のこころに想いを馳せています。(茶谷ムジ)
蓼喰う虫 (新潮文庫)


 No.6「針がとぶ」吉田篤弘


「グッドバイ」――それは始まりの合図 。The Beatles『ホワイトアルバム』がつないだ“空白”―喪失と追懐の一篇 
中2の頃、ホワイトアルバム英国盤を買った。 皆がビートルズだった。買えないLPは借りたり貸したり。ホワイトアルバムだけは絶対に誰にも触らせなかった。ここには、彼ら4人の自由が詰まっている。子供心にそう思っていた。 もう一度、ホワイトアルバムに針をおろしたくなった。(奈佐健臣)




 No.5「日本橋」泉鏡花



新派古典の代表作。稀代の名文家が織り上げる男女の魂のあり方
子どもの頃に吉祥寺の古本屋で「綺麗な名前の作家さん...」と買ったはいいものの、言葉のことも人間のこともよく知らずポカン。いま読めば、私なりに知った日本橋という街が全く違う顔をして愛情とは何か問うてきて、また怯みます。どこを読んでも、聲に出したい。(茶谷ムジ)

泉鏡花集成〈12〉


 No.4「動物農場」ジョージ・オーウェル


“平等な理想社会”の裏側に隠された醜い欲望。権力と支配の仕組みを痛烈に批判した風刺文学
今だからこそ”必要だと思う寓話は、“どの時代でも”必要とされてきたのだと痛感しながらページをめくっています。平易で予測可能な言葉や展開がこんなにも恐ろしい。(北川原梓)
動物農場〔新訳版〕


 No.3「安吾巷談」坂口安吾


無頼派が活写する時代精神。“生きる”事に強気に拘った作家が刻んだルポルタージュ
いまだにお酒を飲み過ぎてしまう日や、役にも立たない遊びをしてしまう日というのが大人にもあります...。安吾の生きた時代の汗臭いエネルギーには到底及ばず、ほっとしつつも少し寂しい。(茶谷ムジ)
安吾巷談


 No.2「生ける屍の死」山口雅也


ニューイングランドの片田舎、死者が続々と蘇る!朽ちてゆく肉体の中でゾンビパンク探偵の求めた真実とは
肉体と魂の関係を目に見える形にしたくて、ゾンビもAIも生まれたのだと思う。 衒学的要素をクールでバイオレントなチラシ寿司に仕立てる山口雅也氏の脳みそに、もうずっと恋をしています。(北川原梓)
生ける屍の死 (創元推理文庫)


 No.1「墨東綺譚」永井荷風


濹東綺譚 永井荷風
向島の私娼街・玉の井で出会った小説家と娼婦。四季と共にうつろう、艶やかで哀しい愛のゆき先
荷風先生が小説の構想を練りながら歩いた濹東の街並みと、鮮やかな表情の女性が生々しく目に浮かびます。雨と風がやまぬのを忘れてしまうような、西日の差し込まない夕方です。(茶谷ムジ)
濹東(ぼくとう)綺譚