泉鏡花は、文字をとても大切にしていました。
「言霊」を信じていたのです。
そして大切に思う余り、そこに愛が生じ、敬い、ついには恐れるまでになりました。
間違った文字を書くなんてもってのほか。お酒を呑み過ぎた翌日など、同席した知人に電話で
「君、僕は昨夜、何も書かなかったらうね、ね。(鏑木清方「思ひ出今昔」より)」
と確かめずにはいられなかったといいます。
『いろはの徳はむりやうなり。つかふときは、たいせつに。』
この言葉をしるした紙が、鏡花の死後、綺麗に整理された机の引き出しの中にたった1枚残されていたそうです。
泉鏡花が今に届ける「言霊」を、体感に変える。背筋が寒くなるくらい、恐ろしいことだと感じます。
https://roudokusha.blogspot.jp/2016/09/in-kamakura-vol2.html