フリオ・コルタサル | 作家を旅する1

5.04.2015

作家を旅する

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朗読者 in KAWAGUCHIで上演されてきた作家と作品について、vol.1から順に紹介していこうと思います。

【フリオ・コルタサル Julio Cortázar】
コルタサル ポートレート
1914年8月26日 - 1984年2月12日
国籍:アルゼンチン

2014年に生誕100周年を迎えたフリオ・コルタサルは、ラテンアメリカ文学を代表する作家の一人で、短篇の名手と呼ばれています。

作風をざっくり表現するなら、幻想的で不条理。
夢と現実の境があいまいで、どこか安定感に欠いた世界の連続。

読み進めるうちに‘奇妙な不安’で体が一杯になるような作品が多くあります。

たった2ページにサスペンスフル満載の『続いている公園』。
正体の知れない物音に脅かされ続け、とうとう自宅を追われてしまう『占拠された屋敷』。
永遠を思わせる途方もない渋滞に巻き込まれた人々を描いた『南部高速道路』。
どれも設定が実験的で、切り口が斬新です。

代表作の一つ『悪魔の涎』は、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の映画『欲望』(1966年)の原作としても広く知られています。この映画化によって、コルタサルは世界に知られる作家となりました。
映画「欲望」 アントニオーニ監督
映画『欲望』は、主人公が盗み撮りした1枚のネガを巡る不条理劇で、原題の『BLOW-UP(=拡大)』が何とも象徴的な作品です。
何だかよくわからない・面白くない・難解だ、なんて言われがちでもありますが、理解しよう!なんてカタく考えずに見れば、スタイリッシュでおかしみのある世界観に引き込まれるのでは、とオススメを。
また、原作(もしくは他のコルタサル作品)に触れてから見ると、映画の世界観をすんなり理解できるように思います。

現実の中に虚構がヌルリと顔を出して、いつの間にかその境界線が曖昧になっている感じが、まさにコルタサル!なのです。
もしかしたら、コルタサルは知らないけれど、『欲望』は見たことがある!という方も多いかもしれませんね。かく言う私もその一人でした。

さて。最初にコルタサルの作風を‘幻想的’と表現しましたが、実際のところ彼自身は、自分の作風を幻想的とは捉えていなかったようです。
演出家の北川原梓さんが、こんな事を書いています。


現実に対する法則や原理の絶対的支配という思い込みを、「まやかしのリアリズム」として真っ向から否定したコルタサル。
彼の作品は‘幻想的’と表現されることが多いのだが、自身は‘幻想的なジャンル(ほかに適当な名称がないので、こう呼ばざるをえないのだが)’と保留をつけている。ここにも、幻想と現実を対極のものとして引き離すことに懐疑的なコルタサルの真理が、見え隠れする。
簡単な事ではないけれど、幻想(=非現実)は現実と同じ平面にあると捉えることで、コルタサルの歪んだ角膜を共有することが出来るかもしれない。(記・北川原梓)


思想やそれに対する分析となると、ちょっと小難しいようでありますが……。
コルタサルの作品自体は、平易な言葉で書かれていて、けっして難解ではありません。
尻込みせずに、ぜひ一度触れてみる事をお勧めします!

一番手軽なのは、岩波文庫の短編集かな。
こちらの岩波ブックサーチャーをご参考にどうぞ。→
http://www.iwanami.co.jp/search/index.html