書付―純度0%カルテ―



―筒井康隆「佇むひと」演出 7月2日
ディストピアを描いた作品とその切り口は数あれど、質感はどれも類似的だ。その理由のひとつは、毛穴の存在である様な気がする。

―皆川博子「猫舌男爵 」読後感 6月28日
つい自分の背中を確かめてしまう感覚。自分だけが知らない自分の背中に自分の知らない何かが生えている不安。自分と地球の境界線がセロファンのような表皮でしかない吐き気と恍惚。


―筒井康隆「佇むひと」演出 6月26日
この世界は殺菌灯の紫外線が降り注ぐ。白く有毒な太陽が人間を殺菌し均一化してゆく。水気のない世界。湿り気のない社会。言葉は体温を失くし、音楽は旋律を忘れ、肉体は表情を切り捨てる。


―筒井康隆「佇むひと」演出 6月24日
リリカル短編集に収録されているだけに、wetな台詞が多い。展開もwet。引きずられて言葉も音もwetになる。アスファルトの下の、土の下の、ずっと下に水の溜まるところがある。その水の底に、wetを沈めなくてはいけない。


―朗読者 演出 6月20日 
作家や作品に自分の新しい世界を持ち込むのではなく、作品に対してどれだけ自分を研ぎ澄ますことができるか。 小説の空、言葉の海から、‘真の地図’を取り出す。